【パワハラ上司】胸ぐら・イス蹴り裁判事例【慰謝料5万円】

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弁護士の林孝匡です(プロフィール

パワハラ裁判を解説します
(大阪地裁 H24.5.25)

上司が部下に向かって
「いい加減にせぇよ。ボケか。アホちゃうか」と言い、

  • イスを蹴って部下のヒザに当て
  • 部下の胸ぐらをつかみ前後に揺さぶった事件

慰謝料は5万円と低めです。
判決の全文を読みましたが、慰謝料の低さは、部下にも問題があったからだと感じました。
暴力はいけませんが、上司がブチ切れる気持ちも分かるw





どんなパワハラ事件か

部下は、2つのパワハラを訴えてます。
順番に説明します。

パワハラ事件1(部下の請求は認められず)

まずは、上司Aへの請求です
(事件2は上司Bに対する請求)

上司Aは、部下の腕をとって自分の席に戻るように誘導したんです。

部下は〈これがパワハラだ〉と。
いや、そんだけかい、て感じですが、

事の発端は次のとおりです。

部下が、派遣社員さんに対して

〈プリンターの調子が悪いんだけど〉と言いました。

派遣社員さんは

〈昨日も今日も業者の方が来てくれたんですが・・〉みたいなことを言いました。

すると部下がブチギレ。

派遣社員さんの席にツカツカと寄ってきて、

「謝れ」「辞めてしまえ」と言い、
派遣社員さんが座っているイスをを蹴りました。
#おいおい

すると、別の社員さんが仲裁に入り、
一度は収束しました。

しかし!
その日の夕方ころ。

部下は、カナリ派遣社員さんにムカついてたんでしょうか。

派遣社員さんの席まで行き、

  • その人の名札を破り
  • その人のパソコンの画面を閉じる嫌がらせをしました

#アンタがパワハラしてるがな

これを見た上司Aが、
部下の行動を止めるために、
部下の腕をとって自分の席に戻るよう誘導しました。

部下の主張は
「このとき、上司が背後から私の肘をワシづかみにしました。そして、逆にねじるようにひねったんです。これはパワハラです」

というものです。

で、病院に行き、診断書までとりました。
〈右肘・右肩関節挫傷の疑い〉との。

しかし、裁判官は、

裁判官
裁判官
診断内容は、右肘・右肩関節挫傷の【疑い】に過ぎない。
傷害について確定診断がなされていない

といい、部下の主張を認めませんでした。

部下は、警察に行き、上司Aを告訴したんですが、不起訴処分。

上司Aの行為について裁判官は、

裁判官
裁判官
上司は、部下と派遣社員との仲介をしたに過ぎない。
上司の行為は、暴行ないし傷害にあたらない

と判断しました。

派遣社員に上記行為をしておいて、止めた上司を告訴する。
なかなかパンチのきいた部下ですな。

パワハラ事件2(5万円の慰謝料が認められた)

続いて、2つ目の事件です。
こちらは5万円慰謝料が認められました。

別の上司Bのパワハラを問題にしています。

こちらもナゾ行動なのですが、
部下は、隣りに座っている社員に対して、わざと大きな咳をして嫌がらせをしてたようなんです。
少なくとも〈上司Bはそのように感じていた〉と、裁判所は認定しています。

この部下の行為に、上司Bはイラツイてたようです。
一回、気になりだしたら、もう止まらないってヤツです。
よくありますよね。
「もうちょい静かに引き出し閉めろや!」みたいな。

で、事件発生です。
#ねーさん

その日、部下が、何度も大きな咳払いをしました。
ついに、上司Bの堪忍袋の緒がキレました。

上司B「いい加減にせぇよ。ボケか。アホちゃうか」
と部下に言いました。

ここから口論が始まりました。

部下は「ボケと言われることはない」と上司に言ったと。
それに対して上司は「部下から〈アンタの声のほうがウルサイ〉」と言われたと。

口論が激化し

  • 上司が、そのへんにあるイスを蹴りました
  • すると、イスが部下の右膝に当たりました
  • そして、上司が部下の胸ぐらをつかんで前後に揺さぶりました

裁判官は上司の行為について

裁判官
裁判官
違法な有形力の行使であり、
部下に対する不法行為を構成する

と判断しました。

〈部下、ちょっと問題ありじゃないの?〉ってケースでも、
モノを当てちゃう、手を出しちゃうと不法行為が成立します
(違法な有形力の行使)




5万円以上が認められなかった理由

パワハラと認定されたら、次は損害額です。
なぜ5万円と低いのか。

私は、裁判官が

いやいや、部下、おおげさやな
裁判官
裁判官

と考えたと思います。

部下は、こう主張しました。

上司の暴行により、右ひざ関節内出血、頚部挫傷を負い、4週間の自宅安静。
その後、4ヶ月も休業せざるを得ませんでした。
全治9ヶ月です。

上司は、こう反論しました。

蹴ったイスが当たっただけですよ。
全治9ヶ月の怪我を負うわけがない。
「あ、いたっ」と棒立ちのままつぶやいただけで、歩いて病院に行ったんですよ

これに対して、裁判官は上司の言い分をいれました。

医療費58,900円の請求については、

裁判官
裁判官
すでに会社が部下に約14万を払っている。
それ以上の支払いは不要

・通院交通費32,600円の請求
・農業のために人を雇った費用315,000円については、

裁判官
裁判官
的確な証拠がない。
暴行の内容からすれば必要性は疑問

と判断しました。
そんなたいそうな怪我じゃないでしょ、みたいな感じでしょう。

部下は慰謝料200万円を請求しました。
その理由として

22日間、太ももから足首までギブスをつけて、松葉杖生活をした。
お風呂に入る時、とても手間がかかった。
ギブズに湯が入ったあと湯が冷めて冷たさで寝れなかった(当時、冬)

など主張したのですが、

裁判官は、スルーで

裁判官
裁判官
上司の行為によって部下が被った精神的苦痛を慰謝するには、金5万円が相当である

でTHE・END

裁判官が、どのような理由で慰謝料の金額を決めるのかは、不明です。
「以上の事実を総合考慮すると〜」というキラーワードで金額を決めます。

なので、請求する側としては、たくさんの証拠を集めて、たくさん裁判所に出すのが得策です。

金額の決定理由は、よく分からんのですが、
積み上げ方式で慰謝料が上がっていく
ことは確かなので。

裁判の長さ

約3年です。激ながです。

部下はパワハラの他に、譴責処分・出席停止処分が無効だ、など様々な主張をしています。
なので長引いたのかもしれません。

パワハラ1本だと、だいたい1年以内で1審は終わります。

会社への請求も基本認められる

会社は〈ウチ関係ないですやん。2人のケンカでしょ〉と主張したのですが、

裁判官は

裁判官
裁判官
単に上司と部下の個人的な関係に起因するものとは認められない。会社の事業の執行行為を契機とし、これと密接な関連性を有するので、上司の行為は会社の事業の執行についてなされたものである

と判断しました。
ムズかしい表現ですが、要は、
会社で起きたことは会社も責任とろうね、ってことです。

基本、パワハラを受けた場合、

  • パワハラをした上司への損害賠償請求
  • 会社への損害賠償請求

が認められます
(※ガチのプライベートの喧嘩は難しいですが)

おしまいに

なかなかクセのある部下でしたね。

胸ぐら、椅子けりレベルの暴行でも 5万円くらいは認められるようです。
椅子けりくらいなら、いろんな会社で繰り広げられてるんじゃないでしょうか。

胸ぐらは、あまりないかな?
もし、そんな体質の会社にお勤めの方、
録音しておいてください。

裁判官は録音を聞いてくれます。

「ちょ、ちょ、苦しいです」みたいな発言を入れておけば、

むむむ!
何か不法な有形力を行使しとるな
裁判官
裁判官

と思ってくれる可能性があるので。



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