【裁判事例】東芝事件|パワハラでうつ病に【5000万円を勝ちとった】12年の戦い

弁護士の林孝匡です(プロフィール
パワハラの裁判例を
分かりやすく解説しています。

今回は「東芝事件」です
(東芝事件/最高裁H26.3.24→差戻し東京高裁H28.8.31)

このような方に読んでもらいたいです。

こんな悩みありませんか?
  • 激務やパワハラでうつ病になりそう
  • うつ病などで休職してる
  • 休職期間が終わると解雇されそう
  • 休職期間が終わると自動退職になってしまう

まずは、ざっと概要を。

会社での激務が原因で、
うつ病になってしまったXさん(女性)

写真はイメージです

休職することになりました。

ところが、休職して1年8ヶ月後、

・・・会社から解雇を言い渡されました。

Xさんは、

会社での激務が原因でうつ病になったのに、なぜ解雇されるの

ってことで、
解雇無効の裁判を起こしました。

なんと、
12年の戦いを繰り広げた裁判

解雇(H16.9)

訴状を提出(H16.12)

地裁判決(H20.4)

高裁判決(H23.2)

最高裁判決(H26.3)

差戻し高裁判決(H28.8)

万里の裁判


労働裁判の中では、トップレベルの長さです。
※ふつうは最高裁までいっても5年くらい

Xさんが
裁判を起こしたときは、38歳
最後の判決を勝ちとったとき、50歳

ここまで長くなったのは、
休業損害がいくらか?
について裁判所の見解が違ったからなんです。

最終的には、

最高裁判所がズバッ!
休業損害について
Xさんに完全勝訴
の判断を出しました。

休業損害
約5,000万円認められました
+慰謝料などもろもろ

高裁の基準だと900万円以下だったので、
大幅アップ。

なんでこんなにデカくなるかというと、
12年間もの休業損害になるからなんです
H16.9の解雇〜H28.6の裁判終了まで

ざっくり、

裁判官

12年間、働いてないけど、働けなくなったのは会社のせいじゃん。12年間の給料分を払いなさいよ

ていうことです。強烈。
会社からすれば気絶レベルの判断。

前提として、
↓ これは地裁からソッコー認められてます

・解雇は無効(労基法19①)
  Xさんのうつ病は「業務の疾病」
・会社は安全配慮義務に違反していた
  → なので慰謝料とか払えや

なので、
休業損害がいくら?
で12年間も攻防を繰り広げたと言っても
過言ではありません。

以下、
Xさんがどれくらい激務だったかを
解説しますね。

約6ヶ月でうつ病になってしまってます。

ぼくもコレくらい激務だよ

って方もいるかもしれません

・裁判所が何に着目してるのか
・証拠あつめの工夫
・ソッコーで会社を辞める方法

などもお伝えします。

タップできる目次

登場人物

Xさん(女性・当時36歳・入社10年目)

↓ 裁判所で認定

・与えられた仕事にマジメに取り組む努力家
・明るく、さっぱりとした印象を与える
・会社の寮に住んでいた(自転車で15分)

あと、裁判所で認定されたXさんの人柄は、

・自己主張が強いほう
・自分のやり方にこだわるタイプ
・言い方がキツイ面があった
が、上司や同僚から「一緒に仕事しにくい」という苦情はなかった

おそらく、
物おじせずハッキリと主張する
優秀な方だったんでしょうね。

そんな方でも、うつ病になります。

仕事を減らしてもらえませんか・・・

と言っても、
課長は聞いてくれませんでした(後述)

ーーーーーーーーーー

↓ その課長

写真はイメージですし若すぎ感あり

Xさんに数ヶ月も長時間労働を続けさせる。
Xさんの体調不良に気づくべきなのに、
適切な対処をせず、うつ病に陥らせる

うつ病になった経緯

おおまかな流れ

まずは、おおまかな流れを。

新プロジェクトが発足(H12.10)

Xさんがあるチームのリーダーに選ばれる

約6ヶ月の激務

うつ病を発症(H13.4)

がんばって仕事を続けるが、

休みがちとなり

欠勤することに(H13.10〜)

カウンセリングを受けたりするが、治らず

休職命令(H15.1)

解雇(H16.9)

裁判官は、

裁判官

うつ病になる直近6ヶ月の激務ぶり、どんなものやろか

をくわしく検討します。

↓ 仕事量は

月240時間ちかくが続いています。

で、
↓ 仕事の質的にもハードでした。

6ヶ月の激務ぶり

↓ Xさんの6ヶ月の激務ぶりです

ポイント
  • 会社の産業医の診断はアテにならない
  • 会社の相談窓口が機能していない
  • 会社の健康診断、意味あんのか
  • Xさんへの配慮、なさすぎ

激務がスタートしてから、
1ヶ月ごとに書いていきますね。

H10.1 

ディスプレイなどを製造する工場に異動
液晶生産事業部の中にある課に配属。
その課は、技術部門を担当していた。

ーーーーーーーーーー

↓ ここから激務スタートです

H12.11 

会社がプロジェクトを立ち上げた。
そのプロジェクトの工程の1つのリーダーに。
激務のはじまりです
プロジェクトの内容
液晶ディスプレイの製造ラインを作る。
そのディスプレイには世界最大のガラス基板を使う。
会社の目標は、1年5ヶ月程度で成功させること
かなりのハードスケジュールと認定

この突貫工事のスケジュールが、これがXさんの長時間労働を引き起こします。
休日に出勤することが多く、帰宅がPM11時を過ぎることも増えました。
寮までの社バスがなくなり、歩いて帰宅することも。

Xさんの仕事
製造装置の運転条件を調整する作業

H12.12

かなりキツかったんでしょう。
頭痛、不眠。
仕事してるときに車酔いした感じになっていました。
Xさんは、社内の「こころの”ほっとステーション」にTEL
民間の神経科クリニックを受診(神経症との診断)

H13.1月〜2月

プロジェクトの工程で、いろいろなトラブルが発生
専門用語モリモリなので省略します

会議で上司が

キミの設定したスケジュールでは、遅い。さらに前倒ししなさい

と指示しました。
Xさんは、

前倒しは、できません。物理的に不可能です

と言ったのですが、
・・・会議にいた誰も上司に異議を述べず、
Xさんにアドバイスもせず。

追い詰められていきますよね

H13.3

Xさんは、平日はプロジェクトの業務を行い、
土日はトラブル対応のために出勤していた。
午前1時を過ぎて退社することもしばしば

・・・・・・

 かなりキツかったんだとおもいます。
 会社の〈時間外超過健康診断〉を受診しました。
 頭痛、めまい、不眠を訴えました

H13.4

再び、会社の〈時間外超過健康診断〉を受診
同じく頭痛・不眠などの症状を訴える。
残業時間 258H〉との記載あり

しかし、会社の産業医は、

産業医

特に仕事時間を減らす必要はありませんね

と。

減らさなあかんレベルやろ!

で、民間のクリニックを受診
うつ病を発症していることが発覚

ほら見ろよ!

〜8月にかけて、うつ病が悪化していきます。
仕事時間が減らず。
会社も何の対処もしなかったので

H13.5

このころ、同僚から見ても、
Xさんの体調は悪かったようです。
仕事をスムーズにできていなかったと。

体調がわるいので1週間休ませて下さい

と欠勤しました。

H13.6

休暇後、出勤したところ
・・・・驚愕。
体調が悪くて断ったはずの仕事の担当者になっていた。

会社のこの対応、ヤバくないですか

 なので、再び断る。
 またまた、〈時間外超過健康診断〉を受診
 〈残業時間 254H〉との記載あり

ここで再び産業医の登場ですよ。

課長から「もう大丈夫でしょ」と言われました、仕事を増やされました

と、苦しい胸の内を訴えたんですね。

ところが産業医、

まあ、1週間休んだということで

何なんコイツ。産業医って〈会社の犬〉なん?

↓ 判決文

そのあとも、定期健康診断を受け、
窮状を訴えたが、
会社は何の対応もとらず

Xさんはこのころ、

体調がすぐれないので、異種製品の開発業務はできません

と言ったのですが、課長は、

了解できません

と認めず。

H13.7

激務がおさまらないため、
再び〈時間外超過健康診断〉を受診
残業時間 254H〉との記載あり

この診断、意味あるのか?
形式的にやってるだけやん。
社員の健康に気を使ってますよアピール?

Xさんは、課長に

精神科に通っています。仕事ができないので、新しいリーダーを決めてもらえませんか

と言いました。
しかし、課長は、
自宅で休養しているXさんに
電話をかけてまで

会議に出席するように

と言いました。

Xさんは1週間ほど有給休暇をとりました。

H13.8

出勤したところ、
わけも分からず涙が止まらなくなりました。


それから、
出勤したり有給休暇をとったりの
繰り返しです。

で、H13.10.9から毎月診断書を出して欠勤しました。

H14.5

再び出勤したが、耐えきれず再び欠勤

H15.1  

休職命令

H16.9  

解雇を言い渡されました

裁判所の判断

解雇は無効だ

ざっくり言うと、

裁判官

会社の仕事が原因でうつ病になってるじゃん。「業務上の疾病」なので解雇は無効!

と判断されました。

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

労働基準法 第19条1項

裁判官が見るポイントは、
・うつ病になる直近6ヶ月の仕事時間
直近6ヶ月の仕事の質(どれくらいストレスがかかるか)
です。

解雇が無効になると、かなりデカイ
判決確定までの給料がもらえるんです。
働いてなくてももらえます。
バックペイといいます。

自動退職になってしまう方も、同じ。
自動退職の無効を勝ち取れば、
バックペイをもらえます。

うつ病は「業務上」が原因だ!と主張するためにも、仕事時間や、何が起きたのか細かく記録しましょう

今回は、
バックペイより休業損害のほうがデカかったので、最終的にはそちらが認められてます。法律構成の話なので省きますね

会社は安全配慮義務に違反している

ざっくり言うと

裁判官

Xさんが心身の健康を損なわないよう注意すべきなのに、何の配慮もしてないよね

と判断しました。

使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康損なうことがないよう注意する義務を負う

電通事件(最高裁判所平成12年3月24日)

休業損害

裁判所同士がバトったのは、ここです。

高等裁判所は、

高等裁判所
  • 2割の過失相殺をする
     Xさんは会社に病状を伝えてなかったよね
     もともとちょっと心が弱いよね
  • Xさんは傷病手当金をもらってるから、損害から差し引くね
  • 将来もらえる分の労災の給付も差し引くね

と判断したんです。
その結果、損害が大幅にダウン・・・。

ところが、最高裁判所は、

最高裁判所
  • 過失相殺できないよ
  • 傷病手当金、差し引くなよ
  • 労災給付まだもらってないじゃん、差し引くなよ

と、判断。
高裁が判断した分を差し引かず、
損害まるまるを認めてくれました
ただ、もらった分の労災給付は差し引く

大幅アップして、
休業損害が約5000万円

Xさん、
うつ病を抱えての
12年にもわたる裁判、
本当におつかれさまでした。

Xさんは労災を申請して却下されたのですが、それも訴訟して勝訴しています

この事件から得られる教訓

細かく記録しておく

裁判官は

裁判官

いつ、何があったのか

をめちゃくちゃ細かく見ていくんですね。

今回の事件で言えば、

・H12.10〜H13.4までの業務
  プロジェクトに参加した経緯
  プロジェクト発足後、
  H12.12までの経緯
  H13.1月・2月の経緯
  H13.3月・4月の経緯
・H13.5〜H13.7の勤務
  担当業務の変更
  H13.5の経緯
  H13.6の経緯
  H13.7の経緯
・H13.8以降 休職に至る経緯 

こんな感じで、細かく区切って
いつ、
何があったのか、
それはなぜ、
会社の対応は
主治医の診断書に何書いてる?
を見ていきます。

なので、あなたがすべきことは、
何かが起きたときに
細かく記録しておくことです。

あとでゼッタイに活きてきます。

心も体もヘトヘトだとは思いますが、
何とか記録&証拠を確保しましょう。

外部機関への相談

会社の相談窓口はアテになりませんね。
産業医も。

会社側に相談してもラチがあかなければ、
外部機関に相談しましょう

パワハラの証拠を確保

Xさんは、

課長からパワハラがあったんです

と主張したんですが、
証拠がないとキツイんです ↓

裁判所は、なかなか認めてくれません。
なので、コツコツと証拠を集めましょう。

証拠が命です。

【過大な要求】はパワハラ

この裁判のころって、
まだパワハラが大問題になってなかったと
思うんです。

でも今の基準に照らせば、
東芝の対応はパワハラです。
過大な要求】にあたります。

詳しくはコチラをご覧ください

辞めたい方へ

Xさんのようなマジメな方ほど、
うつ病になってしまいます。

最悪のケースになれば
自死を選んでしまう方もいます。
↓ 本当に悲しい事件でした。
【裁判事例】19歳の新入社員が自殺|パワハラ上司が「死んでしまえ」

とにかく辞めたい方はコチラをご覧ください

この記事が、
少しでも、
激務でココロを消耗している方の
お役に立てれば嬉しいです。

お役に立ったらシェアお願いします
タップできる目次
閉じる