【コンビニ上司のパワハラ】540万円の慰謝料が認められた裁判事例

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弁護士の林孝匡です(プロフィール

コンビニ店でのパワハラ裁判について説明します。
パワハラ事件ではカナリ悪質です(東地H28.12.20)

店員さんの手を骨折させてますから。
会社代表者が逮捕されてますから。

1年3ヶ月にわたり、日常的に暴行を加えていました。
店員さんが退職後、訴訟を起こしました。

事件の全貌をお伝えします。
最後には、証拠の重要性についても書いてます。
パワハラ裁判は証拠が命です。





どんなパワハラ事件か

会社代表者と現場店長の2人が、タッグを組んで、店員さんをイジめてました。

身体的パワハラ

手を骨折させる。ほか15個のパワハラ(詳細は後ほど)
慰謝料の合計 400万円

精神的パワハラ

仕事上のミスを理由に77万円の借用書にサインさせる。ほか7個のパワハラ(詳細は後ほど)
慰謝料の合計 140万円

少し長くなりますが、順に説明します。

身体的パワハラ1〜15

身体的パワハラ1〜15で、まとめて400万円慰謝料が認められました。
コンビニ店員さんのことを〈Xさん〉と書きます。

長くなりますが、コンパクトにまとめてます。

身体的パワハラ1

タバコを鼻に押しつけヤケドを負わせる。2回(全治1ヶ月以上)

〈説明〉
飲み会での出来事。
現場店長のいいわけを、裁判官が一蹴。

現場店長
「押し付けてない。Xが座りながら眠りそうになったので腹がたった。
頭がカクンと倒れてくるところらへんでタバコを待ち構えさせてただけです(キリッ)」

裁判官
裁判官
いや、同じやがな

判決原文:実質的には、積極的にタバコを押し付けたのと変わりがない

身体的パワハラ2

飲み会で酒を飲まなかったことに腹をたて、店長がカラオケマイクで頭を10〜20回なぐった

〈感想〉
ヤバ。暴行罪。録音して警察に持ち込めば警察が動くケースだと思います。

身体的パワハラ3

会社代表者が、竹の棒でXさんの背中を2回殴打(@店内バックヤード)
仕事の遅さに腹が立ったらしい。

身体的パワハラ4

会社代表者が、焼き鳥串でXの手の甲を刺した

〈感想〉
傷害事件ですね

身体的パワハラ5

飲み会での出来事。

  • 会社代表者が、灰皿でXの頭を殴った。出血。灰皿が割れた。
    #ヤンキー漫画でしか見たことない(特攻の拓)
  • 店長が、Xを階段から突き落とした

身体的パワハラ6

店長が、Xの頭を竹棒で20回殴った。出血。(@店内バックヤード)

身体的パワハラ7

飲み会での出来事。
店長がXの背中にかみついた。#マイクタイソンかよ
飲み会でXが寝たことに腹がたったらしい。

〈説明〉
店長は「してない」と弁明。
しかし、Xの背中を撮影した写真などが証拠として出されたので、店長無念。

身体的パワハラ8

  • 会社代表者が、鍋でXの頭を数回なぐった
  • 会社代表者が、自転車用のチェーン錠でXの背中などを殴った
    #ふたたびヤンキー漫画(湘南純愛組)
  • 会社代表者が、金属製のスプーンで手の甲を複数回なぐった

身体的パワハラ9

  • 会社代表者が、金属製スプーンでXの手の甲を何度も殴る
    #スプーン攻撃やめろや
  • 会社代表者が、Xの右手の手のひらを押し広げるように力をかけ骨折させる(加療約3ヶ月)
    → Xが告発して、会社代表者が逮捕される

〈損害額〉

  • 治療費     16万1821円(診察料、超材料、入院料、文書料など)
  • 入通院慰謝料 30万円
    精神的慰謝料とは別に認められます。
    入院・通院したことに対する慰謝料です。
    (入院10日・通院15日)
    入院・通院が長くなるほど慰謝料が上がります。

身体的パワハラ10

会社代表者が、エアガンでXを撃つことを繰り返した。
Xの手足の爪にくっつけて撃つ。太もも、顔面にも撃つ。

〈説明〉
会社代表者は
「離れたところから撃っただけ。Xの下半身に向けて数回。それ以外はしていない」と弁明。
しかし、逮捕されたときの供述や、写真(手足の爪が変形・変色)などをもとに、店員さんの言い分が認められました。

身体的パワハラ11

  • 会社代表者が、金属製スプーンでXの顔面(眼球付近)と頭を十数回なぐる。
    #スプーンしつこっ
    コンタクトレンズが破損して目あたりから出血。
  • 店長が、Xの腕や足などをライターであぶる、腹を殴る

〈損害額〉
↓ 精神的慰謝料とは別に
・治療費  3,130円(診察料・調剤料など)

身体的パワハラ12

店長が、商品を陳列する棚の仕切板でXの頭・腹を殴る

〈説明〉
店員さんが録音を証拠として提出していました。
録音、超大切です。裁判官が「あ、コレやっとるな」とすんなり認めやすいので。

暴行の音(ガシャン、ビシッみたいな)が録音されますよね。
あと「殴らないでくださいよ」と発言して、「口答えすんな!」などの内容が録音されてれば、
裁判官が「あ、殴っとるな」と認定してくれやすいです。

身体的パワハラ13

会社代表者が、六角棒(長さ137センチ・直径約2センチ)で、Xの両足の親指を付くように強打

身体的パワハラ14

  • 会社代表者が、Xを正座させ、頭・腹をなぐった
  • 会社代表者が、棚に使われている鉄製の棒(長さ1メートル)でXの腕を殴った
    暴行の理由:Xが客に「ポイントカードはお持ちですか?」と確認することを忘れた

身体的パワハラ15

そのほか、日常的な暴行

〈説明〉

会社代表者・店長は「一部だけ認める。それ以外はやってない」と弁明。
#それでもボクはやってない
しかし、撃沈。

会社代表者が逮捕されたときの供述調書があったから。
その供述調書にはこう書かれてました。

  • 「教育のつもりで頻繁に暴行を繰り返していた」
  • 「たくさんのことが頭のなかで一緒くたになっている」
  • 「その時々の感情にまかせて手近にあった凶器となりうるものを使って制裁を加えた」
    #やっとるがな

裁判所は、この供述調書を証拠として、日常的な暴行を認めました。



これらを1年3ヶ月も耐えるなんて、想像を絶しています。

続いて、精神的パワハラです。

精神的パワハラ1〜8

こちらは1つずつ慰謝料が認められています。
精神的パワハラ1〜8、合計140万円の慰謝料です。

精神的パワハラ1

店長が、店舗の金がなくなったことを理由に、Xに60万円を要求

〈慰謝料〉 20万円

精神的パワハラ2

現金77万円の入った袋が放置されていたことに、店長が激怒。
そのミスを理由に、Xに77万円の借用書を作成させる。

〈説明〉
店長の反論
「その事実は認める。でも不法行為ではない」
裁判官
「は?適正な業務上の注意、指導の範疇を逸脱している。いじめ・パワハラにあたり不法行為」

〈慰謝料〉 20万円

精神的パワハラ3

会社代表者が【殴られることの誓約書】へのサインをXに強要する。
「私、Xは、同じ事で注意されたりやるべき事伝える事を忘れた場合、殴られる事を誓います」
#前代未聞の誓い

〈慰謝料〉 20万円

精神的パワハラ4

会社代表者・店長が、飲み代の支払いをXに強要する。総額200万円超え。
Xの主張「一晩で30万円もするクラブの代金を負担させられていたこともあります」

〈慰謝料〉 20万円

〈説明〉
領収書(クレカ・現金払)が証拠として認められました。
本来は飲み代だけが認められますが、今回は慰謝料も認められました。
裁判所は「これほどの回数、金額、上司の立場を利用したパワハラがあったので慰謝料は認められる」と怒ってらっしゃいます。

精神的パワハラ5

店長が、Xに対して、ほぼ全文ひらがなの作業指示書を渡し侮辱した。
「できるかな?」「ちゃんとみようね!」などの記載(証拠あり)
#ナメンなよ

〈慰謝料〉 20万円

精神的パワハラ6

店長が、Xに対し、売れ残り品の買い取りを強要した。
2万9325円(ポテト36個・緑茶24個など)
#食べ物はジャンクなのに飲み物は健康的だ

〈説明〉
慰謝料は個別に認定されず。身体的パワハラの慰謝料400万円に含まれました。
もちろん「2万9325円はXに返せ」との判決となっています。

裁判所は、金額が低いときは「弁償すればそれで損害が回復される」と考える傾向です。
+αで慰謝料が認められるには、先ほどの飲み代200万強要みたいなクソさが求められるようです。

精神的パワハラ7

サビ残。
店長が、Xに対して、無給での手伝いを強要した。ことわると、殴る蹴るの暴行。

〈慰謝料〉 20万円

〈説明〉
店長は「そんなことやってない」と否認。
しかし、以下の証拠により認められました。

  • レジ記録
  • 録音
    無給での手伝い・サービス残業についての会話が録音されていた。
    #Xさん、素晴らしいです
  • 別の訴訟で店長が裁判所に出した書面に「5年間〜残業代なし」との記載があった。
    #なんで店長は自分に不利な書面を出したんだろうか

※ 別の訴訟では、Xが店長に「貸したお金返してください」と請求しています。勝訴。

精神的パワハラ8

Xが、顧客に付与すべきポイントを自分のカードにつけた。これに店長が激怒。
罰金として、200万円の借用書を作成させた。

〈慰謝料〉 20万円

〈説明〉
Xさんが不正をしたことは事実らしい。ただ、金額がカナリ低かったらしい
(判決では読み取れませんでした)。
些細な不正にもかかわらず「200万の借用書とは何ごとか!」みたいな感じで慰謝料が認められました。

裁判の長さ

この事件、3年以上です(事件番号がH25で、判決がH28.12)。
1審だけで3年以上・・・。カナリ長い部類に入ります。
(1審は、だいたい1年くらいで終わりますので)

裁判を起こすには、マジで覚悟と根気がいります。
弁護士さんも、裁判を起こす本人も。

背景事情

Xさんは、どんな人

判決の全文を読みましたが、Xさんは少し不器用な方だったようです。

裁判官
裁判官
Xさんは、人とコミュニケーションをとるのが苦手。
物事がうまくいかないとすぐに投げ出してしまうところもあった

 

そして、おそらく、カナリ気の弱い方だったんだろうと思います。
コンビニ入社の面接のときに、会社代表者に「自分を変えたい」と話していたと。

会社代表者・店長は「そんなXさんを変えるために厳しい教育を行っていた」と主張しています。
#度が過ぎてて教育とは言えませんが

店長は裁判をバックレた

店長は、裁判所に1通だけ書面を出して、それ以降はバックレたようです。
別の訴訟で、Xさんが店長に「貸した返してください」と請求して判決が出たんですが
(たしか60万円)、

それも1万円しか返してないようで。
#金属製スプーンでお仕置きだ

会社代表者と店長は、責任のなすりつけ合い

「裁判長!アイツの方がヒドイことしてたんです!」てな感じでしょうか。
クソですね。

裁判官
裁判官
両名は、お互いに相手が自分よりも悪いといったことを述べ、他責の趣旨が顕著

この事件の特殊事情

特殊事情は、代表者が逮捕されてることです。
逮捕されるほどの暴行を加えていたので、裁判官は〈ほかの暴行も、多分やってるっしょ〉と考えてくれたのではないかと。

パワハラのすべてに証拠があったわけではないのですが、Xさんの主張をほぼ認めてくれています。

しかし、世の中のパワハラは、逮捕されないような暴行がほどんどです。
裁判では、上司は、2億%

やってない」とシラを切ります。

この裁判でも、シラきりがスゴイですから ↓

#(イ)鼻タバコ事件って続くのね
#これ裁判官の表現です

なので、証拠が重要です。

証拠が超重要

録音は大切です。

証拠がなければ、どうなるか。

裁判官
裁判官
証拠がないから、アナタのいう暴行の事実は認められない

バッサリ切られます。

この事件でも、証拠がないからXさんが涙をのんだ部分があります。
飲み代を強要された件です。

判決では約200万が認定されたんですが、
Xさんは「領収書が手元に残ってないのも含めると、300万円は超えていた」と主張したんです。

裁判官
裁判官
200万9935円〜以上の経済的損害を認めるに足る的確な証拠はない

バッサリです。これが現実です。

なので、パワハラで悩んでいる方、証拠は死ぬ気で確保しましょう
(録音、メモ、メール、LINEなど)。
証拠については、また別コンテンツを作ります。



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