【裁判事例】部下の社内恋愛に口をはさむパワハラ【慰謝料30万円】

弁護士の林孝匡です(プロフィール

上司が、部下同士の恋愛に口をはさみました。

女性部下を呼び出して、

課長

あいつはドンファンだ!
女性を泣かせるやつだから、気をつけろ!

と、
男性部下を誹謗中傷したパワハラ事件です。
豊前市事件/福岡高裁 H25.7.30 

男性部下

だれがドンファンじゃ!

ブチギレた男性部下が、上司を訴えました。

地裁では・・・男性部下が負けました。

しかし、高裁で逆転
ラブ・ジェネレーション!

逆転した理由は、
高裁が〈女性部下(恋人)の書いてた日記
に目をつけたからです。
慰謝料30万円が認められました。

地裁の裁判官は、
日記には目もくれなかったんです。

地裁の裁判官

パワハラを裏付ける証拠はないっす

と、バサッ。

しかし、高裁の裁判官は

高裁の裁判官

おいおい、恋人の日記があるじゃないか

日記に光をあててくれました。
日記を証拠としてパワハラを認定。

裁判官によって考えが違うんですね〜
※ 裁判は〈運〉も大事

日記の書き方など、
くわしく解説します。

タップできる目次

どんな人間模様?

職場は、役所です。

登場人物

Xさん:部下の男性
Aさん:Xさんの恋人
Y総務課長:口をはさんだオッサン

判決ぜんぶを読んで感じたことは、

Y課長は、Aさんのことが好きだったのでは。
2人を別れさせたかったのかな。

キモ

ーーー

3回のキモい面談での
誹謗中傷が認定されました。

では、まいりましょう。

パワハラ1(X面談/1回目) 

社内恋愛への不当な介入

上司Yが、
Xさん(男性)を呼び出して

Y課長

市民から通報があった。〈市営団地の前でキミがAと抱き合ってキスをしている〉ってね。 入社して右も左も分らない若い子を捕まえて、だまして。 お前は一度失敗しているから悪く言われるんだ。うわさになって、美人でもなくスタイルもよくないAが結婚できなくなったらどうするんだ!

と言いました。

Xさんは、

Xさん

そんなことしてません

と、否定しました。

すると上司は、

Y課長

通報者がウソを言っているのか?お前がウソを言っている!

と決めつけました。

日記が決め手に

Aさんの日記には、
面談での出来事が書かれていました。
Xさんから聞いたんでしょうね。

そして、出来事の中に、

・お前は一度失敗してるから悪く言われるんだ
・こんなうわさになって、・・・美人でスタイルが良ければこれから何人も声をかけられるだろうけど、乙はそうじゃないんだから、この先結婚できなくなったらどうするんだ

との記載がありました。
Xさんから聞いた言葉を書き留めたのでしょう。

この記載を決め手として、
高裁の裁判官は、

高裁の裁判官

Y課長の発言は、
あったね

と認定しました。

ほんとAさん、スゴイです。
チョー几帳面。

あと、ザックリ

高裁の裁判官

地裁の裁判官さ〜
日記を無視するって、ありえないんですけど

と言ってます。

ただ、
日記には目もくれない裁判官もいることも事実。
ホントどちらに転ぶか分かりません

少しでも
裁判官の気持ちをコチラに傾けるよう

日記を書くときは、
2つのポイントを押さえておきましょう。

日記を書くときのポイント
  • 具体的に書く
     具体的であればあるほど、信用力が高まります。
  • パワハラ以外のことも書
     Aさんは毎日、日記をつける習慣がありました。
     パワハラ以外のことも書いてました。
     ※ パワハラのことだけだと〈後から書いたんでしょ!〉と会社からツッコまれるおそれがあるので、それ以外のことも書いておきましょう。

やれることを、コツコツと。

ーーー

この面談から、1年くらいは、
何も起こりませんでした

Y課長からAさんへ誕生日プレゼント

で、約1年たった頃、

Aさんの誕生日に、
Y課長が化粧品をプレゼントしました。

Aさんの日記に書いてあったんです。Y課長から「ひと足はやい誕生日プレゼント」といって渡された、と。

その数日後、
ナゾの面談に突入します。

パワハラ2(A面談)

Xへの誹謗中傷

ある日、Y課長は、
突然Aさんを呼び出して、

Y課長

あいつは危険人物だぞ。これまでもたくさんの女性を泣かせてきた。 豊前市のドン・ファンだ。キミを(Xがいる)福祉課から市民健康課に異動させたのも、そのせいだ。 向こうの親は、Xとキミとの交際を知っているのか。もっと他に友達を作って何でも相談するようにしなさい。

と、おせっかいを垂れました。

とどめには、

Y課長

自分を飲みに誘ってくれてもいい

は?

ゼッタイAさんのこと好きやん!
口説きにかかってるやん!

Aさんは
〈なんだいきなり〉と思ったんでしょうね。
住民通報の件から1年たって、いきなり。

Aさん

あの・・・昨年のように、住民の方から苦情があったのですか?

と聞きました。
すると、上司Yは

Y課長

いや、別にない

ないんかい!
おのれは〈別れさせ屋〉かって感じです。
ていうか、勤務時間中に口説くなよ。

日記が決め手に

ここでも
Aさんの日記が決め手になりました。

Y課長がXさんのことを「危険人物」「たくさん泣かせてきた」「ドン・ファン」 と言った

との記載があったんです。

この記載を決めて手として、
高裁の裁判官はザックリ

高裁の裁判官

Y課長、
また言っちゃたね〜

と認定しました。

魂を売ったZ係長

あと、
Z係長っていうヤツがいます。

このZ係長、
・X面談(1回目)
・A面談
に立ち会ってたんですね。
面談をずっと聞いてました。

Z係長は、裁判で
魂を売っちゃいました。

Z係長

Y課長は、そんなこと言ってません

と、Y課長の味方をしました。

裁判では、

みんな宣誓するんですが、
〈良心〉もクソもありません。
〈知っていることを隠す〉し、
〈ないことを申し上げます〉
アーメン

ウソつきたい放題です。
※ ウソのサブスクリプション

なので、証拠で仕留める必要があります。

今回は日記が決め手となりましたが、
かなり例外的なケースです。

裁判で確実に勝つためには、
録音などもっと強い証拠を集めて下さい。
コチラの記事もご覧ください
【証拠9選】パワハラ上司&会社を訴えるために【ゼッタイ必要】

Xさんが怒ってY課長に直談判

だれがドン・ファンじゃ!

Xさんは
Aさんからこの出来事を聞きました。

ブチギレ。

翌日、すぐさま
Y課長のいる総務課にいきました。

しかし、不在だったため、
Z係長に伝言をお願いしました。

Xさん

私を誹謗中傷するためにAを呼び出さないでほしい、とY課長にお伝えください

パワハラ3(X面談/2回目)

その伝言を聞いたY課長が
ブチギレました。

Xさんを呼び出して、

Y課長

お前は何サマのつもりだ!〈Aを呼ぶな〉とはどういうことか。お前が離婚したのは元嫁の妹に手を出したからだろうが。一度失敗したやつが幸せになれると思うな。親子くらいの年の差があるのに常識を考えろ。お前、オレをなめてるのか。俺が野に下ったら、お前なんか仕事がまともにできると思うなよ!

と吐き捨てました。

ここでは
日記は取り上げられず。

Y課長・Z係長の証言があいまいだったり、裁判の途中で変更したりしたので、Xさんの主張が信用されたのかもしれません。

3つのパワハラを裁判官がどう判断したか

Y課長が
部下の恋愛に首をツッコんだことについて、

裁判官は、ザックリ

高裁の裁判官

XさんとAさんが付き合ってて、なにか職場に悪影響あった?なかったよね。じゃーあなた、首ツッコじゃダメ。違法!

と認定しました。

そして、
3回の面談でのY課長の発言が、

・Xさんに対する誹謗中傷
・名誉毀損
・私生活に対する不当な介入

にあたると認定しました。
※ ドンファンに対する名誉毀損は?w

お次は、いくら認められたかです。

損害賠償の金額

Xさんが請求した金額

Xさんは

Xさん

パワハラが原因でうつ病になりました。仕事を休まざるを得ない状態になりました

と主張し、
約314万円を請求しました。
・入院治療費   
・休業損害  
・慰謝料  

裁判所が認めた金額  

裁判所は、
誹謗中傷の慰謝料として30万円だけ認めました。

30万円にした理由
  • 面談は3回だけ    
  • ほかにいたのはZ係長だけ     
     名誉が毀損された程度は限られている    

で、それ以外の請求を認めなかった理由なんですが、
〈パワハラが原因でうつ病になったわけではない
と認定したんですね。

なので、うつ病を前提とする請求は棄却。

・入院治療費
・休業損害

 
むずかしい言葉でいうと
〈パワハラとうつ病との間に因果関係はない〉と判断しました。  

なぜか?
Xさんが提出したカルテです。  

そこには
〈順調に回復してる〉  
〈表情態度は落ち着いている。受診を几帳面にするのはなぜ?〉
という医師のコメントが書いてあったんです。

もろもろを検討して、
因果関係なしと判断。

裁判官は〈カルテ〉だけを見て判断します。
カルテに何が記載されるか、チョー重要です。

裁判の長さ

地裁で、約2年。
高裁までいって合計2年4ヶ月です。  

うつ病との因果関係が争われる場合は長引きますね。  
通常であれば9ヶ月〜1年程度です。

この事件から得られる教訓

この事件では、
日記が証拠として認められてますが、
かなり例外的です。

一般的には、

裁判官

あなたが書き留めたにすぎない。日記だけでは、パワハラがあったとは認定できない。

バサッ!で終わるケースが多いんです。

なので、不穏な呼び出しを食らったら、
録音して下さい。
録音は最強です。

もし録音できなかったら、
日記を書きましょう。
繰り返しになりますが、

日記を書くときのポイント
  • 具体的に書く
     具体的であればあるほど、信用力が高まります。
  • パワハラ以外のことも書

を押さえて下さい。

日記以外の証拠も確保しましょう。

上でもあげましたが、
コチラの記事も是非ご覧ください
【証拠9選】パワハラ上司&会社を訴えるために【ゼッタイ必要】

裁判は、証拠が命

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