【裁判事例】パワハラ上司が扇風機をあて続け【慰謝料60万円】

弁護士の林孝匡です(プロフィール

【真冬に扇風機をあて続ける】
というパワハラ事件です
(日本ファンド事件/東京地裁H22.7.27)
その他、暴行・暴言もあり。

消費者金融会社で起きた事件。
金融業界は体育会系なので、
パワハラ体質なんでしょうね〜。

3人の社員が声を上げて、
上司と会社を訴えました。

3人分あるので、ちょっと長いです。

タップできる目次

部下3人にどんなパワハラを?

まずはザックリ概要です。

部下3名は、
債権管理・債権回収の部署に所属してました。
貸した金かえせよ部署です。
キツイ部署です。

パワハラをした上司Yは、
部長の職に就いてました。

上司Yが

部下Aにやったこと

  • 扇風機をあて続ける
  • 辞めさされるかも、と不安にさせる

【慰謝料】60万円 

部下Bにやったこと

  • 扇風機をあて続ける
  • パワハラ発言+謝罪文の強要

【慰謝料】40万円

部下Cにやったこと

  • 暴行(背中にひじテツ・ひざを蹴る)
  • パワハラ発言

【慰謝料】10万円

あとで詳しく説明します。

会社の体質

細かい話に入る前に、会社の概要を。
会社と上司Yは、こんな感じでした。

パワハラ金融
  • 達成不可能な目標を設定
    達成できない場合
    上司Yは、従業員が多数いる前で叱責
    「バカ野郎」「会社をやめろ」「給料ドロボー」などのパワハラ発言
  • サービス残業、サービス休日出勤が常態化
    上司Yが部下に対して〈休日出勤するよな〉的圧力をかけていた。
  • 普段、上司Yがやってたこと
    部下の頭を定規で殴る、電卓を投げつける
    #消費者金融はパワハラ体質ですね〜。CMのクリーンさとは裏腹に。
    元武富士の人から聞いたんですが、怒号とともに、普通に灰皿が飛んでたと
  • 上司Yが部下に新聞の購読を強要
    判決では宗教新聞との表記。
    部下が断ると叱責。
    断りきれずに購入した部下に対しては、新聞の内容を理解しているか確認していた。
    #もはや布教活動
    ある社員が新聞の購入を断り続けたところ、上司Yはその人を別の部門に異動させた。
    その後、その社員は、休日出勤を迫られたり、退職勧告を受け、退職。
    #新聞ことわると粛清
  • 有給休暇はとれない

裁判官は
〈パワハラ体質の会社だ〉と断罪しています。
詳しくは、

裁判官
裁判官
他の従業員が多数いる前で、部下の従業員やその直属の上司を大声で、時には有形力を伴いながら叱責したり、手当なしの残業や休日出勤を伴うことを強いるなどして、部下に対し、著しく一方的かつ威圧的な言動を部下に強いることが常態となっていた

と認定しています。

ーーーーーーー

別事件ですが、
↓ 武富士まじヤバかった

ーーーーーーー

続いて、具体的にどんなパワハラがあったのか説明します。

部下Aへのパワハラ

1. 扇風機をあて続ける

なぜ扇風機をあて始めたか

部下A・部下Bは喫煙者でした。
休憩時間に指定の喫煙場所で喫煙していました。

上司Yは、部下の服についているタバコの臭いが気に食わなかった様子。
「タバコをとるか?会社をとるか?」と部下に迫りました。
#私と会社どっちが大事なのよ的追い込み

上司は、タバコの臭いが持病に悪影響を及ぼすことをおそれたんです。
で、扇風機を部下A・部下Bにあて始めました。

これがヒドイんです。
真冬の12月から、翌年6月までです。
しかも、10時〜17時という長時間。
かなり頻繁に。
時期によってはほぼ毎日。

暴言もありました。

上司が部下Aに向かって

「オマエの頭がスゴイことになってるぞ」と笑う。

こんなことが半年ちかく続きました。

別の上司もクソ野郎

この状況に部下Aが耐えきれなくなりました。
で、4月中旬、別の上司に相談しました。

「もう体がもたないかもしれないです」
と相談したところ、

別の上司は、部下Aの席に座り

「なんだ、涼しくて気持ちいいじゃないか」「マフラーでもしてくれば」

とのクソ発言。
会社自体がパワハラ体質ですね。

裁判所は、この発言をどういう証拠から認定したんだろう・・・

↓ これ判決なんですが

〈証拠略〉となってるんです。
だいたい省略されてるんです。

これ、録音が提出されたんじゃないかな〜。
発言が詳しく認定されているので。
しかもすんなり認定されてるので。

パワハラ上司と話すときには、録音がベストです。

証拠がチョー大事ってことは
コチラの記事をご覧ください
【証拠9選】パワハラ上司&会社を訴えるために【ゼッタイ必要】

部下Aが抑うつ状態に

部下Aは、

  • 扇風機を4ヶ月近くあて続けられ、
  • 別のクソ上司に相談しても無視され、

抑うつ状態になってしまいました。

裁判官は、扇風機あてが原因でうつになったと認定しました。

裁判官
裁判官
原告Aによる心療内科への通院・休職は、
上司Yによる扇風機の風当てによるものとして相当因果関係が認められる

で、

診療費、医療費 合計5,430円
休業損害(15日の病休、9日の有給休暇)35万4,552円
を認めました。

♦上司のパワハラが精神的にキツイ方へ

病院にいって、診断書をもらってくださいね。
因果関係が認められれば、部下Aのように診療費等が認められるので。
通院慰謝料が認められることもあります。

部下Aの慰謝料は別途、認められています。
↓ のパワハラと合わせて。

2. 辞めさされるかも、と不安にさせた

部下Aに対するパワハラ行為の2つ目。
次のとおりです。

始末書を提出させる

経緯は次のとおりです。
部下Aが、
上司Yの言うとおり仕事の進めていなかったんです。

これについて上司Yが激怒。
部下Aから事情を聞いたりすることなく
「オレの言うことを聞かないということは懲戒に値する!」
と怒鳴りました。

で、始末書を提出させました。
始末書には、
〈今後、このようなことがあった場合には、どのような処分をうけても一切異議はございません
と書かせました。

怒鳴る

経緯は次のとおりです。
部下Aは上司Yに対して、
「かなり忙しいので、他の社員も電話にでるよう指導してほしい」
と申し入れました。

すると、上司Yは
お前はやる気がない。なんでここでこんなことを言うんだ。明日から来なくていい
と怒鳴りました。

この上司の行為と発言に対して、
裁判所は、

裁判官
裁判官
上司Yの下で働く従業員にとっては、上司Yの言動に強い恐怖心や反発を抱きつつも、上司Yに退職を強要されるかもしれないことを恐れて、それを受忍することを余儀なくされていた。このような背景事情に照らせば、上司Yの行為は、社会通念上許される業務上の指導を超えている。部下Aに過重な心理的負担を与えており、不法行為にあたる

と断じました。

慰謝料額

以上のとおり、部下Aに対しては、

  • 扇風機をあて続ける
  • 辞めさされるかも、と不安にさせた

というパワハラが認められました。
慰謝料はあわせて60万円です。

部下Bへのパワハラ

1. 扇風機をあて続ける

これは部下Aに対するパワハラと同じです。

2. パワハラ発言+謝罪文の強要

経緯は次のとおりです。

部下Bが仕事でミスをしてしまいました。
信用情報機関への報告を忘れるというものです。

このミスは、会社全体のミスでした。
部下Bだけが責められるものではなかったんです。

裁判官は、

裁判官
裁判官
部下Bのミスは、
会社が7年以上も適切に処理していなかったことが発端

と認定。

なのに、上司Yが激怒。
バカヤロー」「給料ドロボー」「責任をとれ」と叱りました。
そして、部下Bに、以下の謝罪文を作らせました。

〇〇様(←上司Yの名前)

私の職務怠慢により会社に迷惑をかけてしまいました。
今後は視野を広げ担当案件の見直しを徹底することを誓約いたします。
今後の過失についてはいかなる処分も受け入れる覚悟です。
給料をもらっていながら仕事をしていませんでした。
誠に申し訳ございませんでした。

下線部については、上司Yが部下Bに書き加えを命じました。

この謝罪文について、裁判所は、

裁判官
裁判官
部下Bを執拗に非難し、自己の人格を否定するような文言を、上司Yに宛てた謝罪文として書き加えさせたことにより、部下Bに多大な屈辱感を与えた。不法行為にあたる。

と断じています。

慰謝料

以上のとおり、部下Bに対しては、

  • 扇風機をあて続ける
  • パワハラ発言+謝罪文の強要

というパワハラが認められました。
慰謝料はあわせて40万円です。

始末書も内容がドギツければパワハラになります。
写真をとっておきましょう

部下Cへのパワハラ

1. 暴行

背中にひじテツを食らわせる

経緯は以下のとおりです。

ある従業員が退職することとなり、
オフィスで席替えが行われました。

すると上司Yが「うるさい!」と怒鳴り、
#机の移動はうるさいものや
#お前がうるさい

ここからプロレスです。

  1. まず、次長の腹を拳で殴る
  2. そして、部下Cの背中にひじテツ
    (ひじを振り下ろして背中に激突させる)
  3. 立て続けに、別の従業員の背中にもひじテツ

という暴行をしました。

#ひじ
#次長は訴訟に参加せず
#なぐられ損やん。10万くらいいけたんちゃうかな

ひざを蹴る

経緯は次のとおりです。

上司Yが部下Cを自分のデスクに呼びつけて、説教

「貸付金の回収額がどうしたらよくなる。よくならないと君らが職を失うだけだ。
オマエら言い訳ばっかりだ。ダメだったら追い出すからな」

と言いながら、

上司Yがイスに座った状態で、自分の足の裏で、部下Cのひざを蹴りました。
悪質な部類ですね。
ふんづけるタイプの蹴り方。

上司Yは
「足を組み替えたときに偶然あたったんです」
と、

ラブホテルに入ったけど朝までトランプしてましたレベルの反論をしましたが、

裁判官
裁判官
上司Yが原告Cが座って面談していたならば、2人の間にはある程度の距離があったと推測されるところであって、座った状態から足を組み替えることにより偶然に足の裏があたったなどということは、通常考えがたい

と一蹴しました。

2. 暴言

「よくこんなヤツと結婚したな。モノ好きもいるもんだな」

上司Yが部下Cの妻を話題に出し、
部下Cに対して
「よくこんなヤツと結婚したな。モノ好きもいるもんだな」
と暴言を吐きました。

上司Yは「いい奥さんが結婚してくれたね、というごく普通の会話だ」
という
天動説のような反論をしましたが、

裁判官は、

裁判官
裁判官
上司Yの発言で部下Cは大いに屈辱を感じた。
社会通念上許容される範囲を超えて精神的苦痛を与えたといえ不法行為にあたる

と一蹴しました。

「寿司が食えないヤツは水でも飲んでろ」

この発言は、パワハラとは認められませんでした。
社内の昼食で寿司が出された時のこと。
部下Cは体質的に寿司が食べれず、別の弁当を食べていました。

すると、上司Yが
「寿司が食えないヤツは水でも飲んでろ」
と暴言を吐きました。

部下Cは、
「私を侮辱する発言だ。パワハラだ」
と主張したのですが、

裁判官は、

裁判官
裁判官
言い方にやや穏当さを欠いているが、この発言は、部下Cの食事の好みを揶揄する趣旨の発言。部下Cには寿司以外の弁当が用意されていたことも考えると、日常的な会話として社会通念上許容される範囲を逸脱するとはいえない。

と述べ、パワハラではないと判断しました。

これ、微妙なとこですよね〜。
「パワハラだ」と認定する裁判官もいるかも。

慰謝料額

  • 背中にひじテツを食らわせる暴行
  • ひざを蹴る暴行
  • よくこんなヤツと結婚したな〜との暴言

以上のパワハラが認められました。
慰謝料は合計で10万円です。

上司は絶対にシラを切る

上司は裁判になると絶対に
「私、やってません」
と、シラを切ります。

この裁判でも、こう認定されています。

上司Y「いずれも否定する」

つまり
「ぜんぶ、やってない」と言ってます。

でもこの裁判では、証拠として、

  • 同僚の証言
  • 同僚が書いてくれた陳述書
  • おそらく録音

があったので、
上司のパワハラが認定されました。

証拠がなければ、負けてた可能性があります。
なので、パワハラ上司に〈法的鉄拳制裁〉を加えたければ、
録音しておいてください。

裁判の長さ

1年〜1年半くらいです。
パワハラ1本だと、1年くらいが相場です。
他の請求も合わせると長引きます
(残業代、解雇無効など)

おしまいに

最後まとめると、

部下Aにやったこと

  • 扇風機をあて続ける
  • 辞めさされるかも、と不安にさせた

【慰謝料】60万円 

部下Bにやったこと

  • 扇風機をあて続ける
  • パワハラ発言+謝罪文の強要

【慰謝料】40万円

部下Cにやったこと

  • 暴行(背中にひじテツ・ひざを蹴る)
  • パワハラ発言

【慰謝料】10万円

です。

会社のへの請求もスッと認められてます。
使用者責任ってやつ(会社で起きたことは会社も責任とろうね)です。

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弁護士に依頼すると、
今回の事件だと、
金額の半分以上は弁護士報酬になっちゃう気がします。

なので

10万でもいいから、パワハラ上司をギャフンと言わせたい!

って方は、
ゼッタイに録音などの証拠を固めて
労働局か労働委員会に申し立ててみてくださいね。



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